NHK交響楽団の第1580回定期演奏会にロジャー・ノリントンが登場した。イギリス人で歴史的考証を解釈に盛り込む「ピリオド楽器演奏」を推進してきた指揮者の一人。近年では、シュトゥットガルト放送響とともに、20世紀初頭の音楽にまで歴史的な演奏法を意識した解釈を施している。日本のオーケストラが彼の手法にどこまで順応するのか、そこに興味が集中した。
エルガーの「コケイン」序曲が始まるや否や、ヴィブラートを削減した弦楽器の響きが、鳴り響く。ヴィブラートの常用は1930年代以降に一般化した事実を根拠とする解釈に、N響が柔軟に対応していたのに驚いた。
ドイツ出身の若手、石坂団十郎をソリストに迎えたエルガーのチェロ協奏曲でも同じ。それどころか、石坂までもがヴィブラートを制限したのである。その結果、とりわけ弦楽器群が提示する動機の姿がにじまず鮮明に聞こえ、彫りの深い演奏が実現した。
ノリントンは歴史的考証という以上に、個性的な表情をあざとく示す時がある指揮者でもあり、モーツァルトの交響曲第39番では彼らしさが全開となった。
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不慣れな表現ゆえの抵抗感や萎縮が、技術的な乱れを誘発した場面もあった。しかし、伝統を大切にする日本の名門が最先端のモーツァルト解釈へここまで接近し得ることが確認されたのは、大きな収穫だった。
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| (安田和信) |
NHK交響楽団第1580回定期演奏会 2006年11月1日 サントリーホール
『読売新聞』 演奏会批評 2006年11月7日夕刊
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